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Fig.10 Time changes of dyed fronts of river water (Fig.10 Case 0, Case 3 )

 

比べ河川水拡散面積を約1.4倍以上拡大させ、湾外への流出をも促進する効果が確認できた。水路の規模や設置位置の検討が今後の研究課題であるが、海底地形可変工法が停滞性水域の流況改善に役立つことを確認できた。

 

3.3 「涜況制御構造物設置工法」の効果
流況制御構造物設置による工法の応用実験では、大阪湾内で最も支配的な明石海峡からの循環流Aを利用して、湾内流況を制御することを目的としFig.11に示すように、明石海峡の淡路島側から垂直に突出した。

 

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Fig.11 Experimental case for dike construction.

 

長さ1m(現地換算2km)の流況制御構造物(広義の導流堤)を設置したCase 1と、反対側の須磨から長さ1.5m(現地3km)に設置したCase 2、更に、循環流Aの中央に2m(現地4km)の構造物を東西方向に設置した場合をCase 3として実験を行った。各ケースの導流堤の長さや向きは、初段階として試行的に設定し流況変化の程度を探ることを目的とした。実験内容については、浮標追跡による流況変化を測定し、淀川から模型水と同密度の染料水を年平均流量で連続放流し、河川水拡散分布の変化を調べた。また、導流堤設置による瀬戸内海全域に与える潮汐への影響も調べた。
各実験ケースでの浮標追跡による流跡分布図をFig.12に、50周期間での淀川河川水拡散過程をFig.13に示す。淡路島側に導流堤を設置したCase 1では、明石循環流Aは、現状地形Case 0に比べ著しく拡大・加速され、同時に、淀川河口沖に反時計回りの循環流が新たに形成した。この河口沖の循環流により淀川河川水は現状より数倍以上も早く拡散し、明石海峡を抜けるパターンとなった。
須磨側に導流堤を設置したCase 2では、明石循環流Aの回転方向が現状と全く反転し、反時計回りの強い循環流となる驚異的な変化が生じた。これに伴い淀川河川水は神戸沖海岸を細く這って明石海峡に輸送される結果となった。
明石循環流Aの中央に設置したCase 3の結果では、循環流Aの回転方向は変らないが、規模と流速が現状よりも半減以下に縮小した。このため友ケ島水道からの循環流領域が北上拡大し、停滞性水域が強調されることになった。その結果、淀川河川水は河口域に強く停滞し、拡散しなくなる状態に変化した。一方、本実験による瀬戸内海全域への潮汐変化は大きく、Case 1,2の位相、振幅変化は瀬戸内海西部の安芸灘、周防灘まで影響するものとなった。

 

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Fig.12 Experimental results of water parcel trajectories in 10 tidal periods.

 

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Fig.13 Diffusion processes of the reiver water from Yodo river (in 50 tidal periods).

 

 

 

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